ENBRIDGE DESIGN

父から息子へ――記録を残すこと、価値をつなぐこと

2026.9.23

コラム

ENBRIDGE DESIGNのロゴマークは、タツノオトシゴです。
このマークの原型は、父・脇坂俊彦が創立した出版社「東潮社」で使われていたものです。

東潮社は、戦争裁判や現代史など、時代の中で埋もれかねない記録を出版していました。

父が出版した本の中に、次の一文が残されています。

このような悲惨な記録を公開するのは、今はなき旧日本軍や、戦争の古傷をえぐり出すためではない。

二十数年前のできごとが、あまりにも歪曲され、勝者は正義なりとし、また報道や宣伝に浮かびあがった一部のものと、一将の功(戦記)のみが、ふたたび称えられんとしているからである。

私は63歳になって、初めてこの言葉の重さを少し理解できたように思います。

父が何を考え、どのような覚悟でこれらの本を世に送り出したのか。本人から十分に聞くことはできませんでした。

しかし、残された出版物からは、都合のよい記憶だけを残すのではなく、消されそうな事実や声も記録して、次の時代へ渡そうとする姿勢が感じられます。

私は出版社を継いだわけではありません。
歩んできた道も、公共空間の製品開発という異なる分野です。
それでも、父から受け取ったものがあります。

それは、まだ十分に知られていない価値を見つけ、世の中へ伝え、次へつなぐことです。

中小企業や町工場には、優れた技術や経験という「宝」が眠っています。
私はそれらを見つけ、企業と企業、技術と市場、人と人の間に橋を架けたい。
父が出版を通して、記録と次の世代をつないだように。
私はものづくりを通して、技術と社会をつないでいきたい。

父が使っていたタツノオトシゴのマークを、ENBRIDGE DESIGNのロゴとして受け継いだのは、そのためです。

受け継いだのは、会社ではありません。
価値あるものを見つけ、伝え、次へつなぐという志です。

父から息子へ。

このタツノオトシゴは、時代を越えて架けられた、もう一つの「橋」なのだと思っています。

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